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宿泊業界の離職率改善のカギは? カスハラ対策や未経験者の積極起用
2025.07.24
特に多くの施設が取り組んでいるが、地元の食材や名産品の活用、そしてイベントなどへの参加です。
例えば、静岡県にある「伊豆熱川 自家源泉 おもてなしの宿 みはるや」では、地元の名産品・ニューサマーオレンジを使った「ニューサマーオレンジ餡最中」が人気です。これは元々、従業員のアイデアから商品化され、最初は宿泊者のお茶菓子として提供されていたもの。それが好評だったため、お土産品としても販売するようになったのだそうです。また宿だけでなく、伊豆熱川を盛り上げるために、地元のお祭りを運営する取引先企業と連携して、ヨーヨー釣りなど地元の子どもたちが楽しめる場所作りにも取り組んでいます。実際、温泉街に台湾提灯を灯すイベントに出店を出すなどといったことも行ってとのこと。
北海道の「ホテルゆもと登別」では、登別調理長登別温泉調理師登庖会会長を務める料理長が、ほかの施設の料理人なども集めて勉強会を開催。料理人同士で新しいメニューの提案や情報交換などを行っているのだとか。また、地元の学校の生徒たちとご当地弁当や鹿肉を使ったメニューを開発し、販売も行っているんだそうです。また登別温泉伝統の祭り「鬼花火」にも毎年参加。スタッフが鬼をかぶって参加しているほか、やりたいと名乗りを上げる若手がいれば全力でバックアップする体制があるとのこと。地域の祭りやイベント、町おこしなどに興味のある人材大歓迎とのことなので、そのような人が働くにも最適な環境かもしれません。
また、立地を生かした取り組みを行っているのが北海道の「札幌パークホテル」。こちらは自然豊かな中島公園の一角にあるホテルです。公園に隣接したホテルだからこそ、緑や自然を大切にするという考え方の元、2022年から屋上で「都市型養蜂」を始めました。そこで採密されたはちみつを使用した「北海道はちみつ生カステラ」を販売しています。これ以外にも、レストランや宴会で余った食材を社員食堂で利用するなど、廃棄ロス削減の取り組みにも力を入れています。
食材活用以外にも地元の生産者さんとの交流や、観光施設と協力している施設も多くあります。
福井県にある「光風湯圃 べにや」では、従業員が収穫など地元の生産者のお手伝いを積極的に行っています。またワークショップとして、たくあんや味噌作りを体験することも。そのような体験が、地元の方とのコミュニケーションや食材への理解を深めることにはもちろん、お客様とのコミュニケーションにも役立っているそうです。
一方で、見どころを増やすことで地元の活性化に一役買っているのが、群馬県にある「草津温泉ホテルヴィレッジ」です。こちらが取り組んでいるのが「花畑プロジェクト」。これはホテル周辺の遊休地にアジサイを植えたり、水芭蕉の株分けをしたりすることで、周辺を花いっぱいにしようという取り組み。年間370万人が訪れる草津エリアで、温泉、グルメに続く魅力的なコンテンツとして楽しんでもらえる風景を作るのが目的です。花を楽しみながら、日帰りでもランチや温泉を楽しんでもらい、地域の活性化に繋がればという想いが込められているそうです。
地元の観光施設と一緒にイベントを行ったり、コラボ商品を発売したりする施設も増えてきましたが、その一例が、和歌山県の「白良荘グランドホテル」。過去に地元の観光施設「アドベンチャーワールド」とコラボしたパンダのマリトッツォを販売していました。ほかにも、従業員が浜の清掃活動や海開きに参加するなど、地域の活動に積極的に関わっています。
あわせて、最近増えているのが地元在住のアーティストを応援する取り組みや、アートイベントを支援するような施設の取り組みです。
京都府の「エースホテル京都」では、地元の染色工芸家・柚木沙弥郎氏によるホテルロゴを採用。また、地元の美術館などで開催される企画展に合わせたテーマで作品を一般公募し、ロビーギャラリーに展示するなどといったことを行っています。
同様に、地元のアートイベントに積極的に参加しているのが、群馬県の伊香保温泉にある「福一」。地元で開催される「渋川アートリラ」は、温泉街の旅館や商店などに展示されたアート作品を、街を巡りながら楽しむことができるイベント。福一も期間中は館内に美術作品を展示しアート目的で訪れる人も多いのだそう。
さまざまな施設が行っている取り組みについてご紹介しましたが、いかがでしたか? 宿泊施設で働くと、このように地域と関わる機会が増えたり、それに関する仕事を担当したりすることもあるかもしれません。接客はもちろん、地域活性化や町おこしといったことに興味があるのなら、そのような宿泊施設について一度調べてみるのもおすすめです。