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宿泊業界の離職率改善のカギは? カスハラ対策や未経験者の積極起用

2025.07.24

宿泊業界で注目されがちなのが、その離職率の高さ。今回は、そんな宿泊業界の離職率の現状と、それを改善するために行われている取り組みなどについてご紹介します。

離職率は26.6%。入職率が上昇し離職率を上回る

厚生労働省が行った「雇用動向調査」(令和5年)の「産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率」の調査によると、「宿泊業、飲食サービス業」の離職率(一般労働者とパートタイム労働者の合計)は、26.6%。産業別の離職率では「生活関連サービス業、娯楽業」に次ぐ、2番目の高さとなっています。ここ数年、25~26%前後を推移していて、他産業に比べてもやや高い数値であることが分かります。これが、宿泊業界の労働力不足の原因の一つとなっているため、業界内では、離職率改善のためにさまざまな対策が行われていいます。

その一方で、同調査での入職率(一般労働者とパート労働者の合計)は32.6%と、離職率を上回る結果に。ここ数年は、入職率を離職率が上回っていただけに、業界内でのさまざまな施策の効果が徐々に表れてきていると言ってもいいかもしれません。

離職率改善にもつながる、労働条件の改善、カスハラ対策

宿泊業界の離職理由で多いのが、給与の低さ、長時間労働、休みの取りにくさといった労働条件。これについては、各施設が改善に向けて努力しています。しっかりと対策をしている施設は求人票などに詳細な記載がある場合がほとんどなので、きちんと確認の上、応募するようにするのがおすすめです。

また、労働条件とあわせて離職理由として多いのが「お客様からの理不尽なクレーム」。そのような、いわゆる「カスハラ」にストレスを感じ、仕事を辞めてしまうケースも少なくありませんでした。これから宿泊業界で働きたいと思っている人にとっても、このようなカスハラ問題は気になるところではないでしょうか。

この点については、自治体が条例で客からの迷惑行為を防止する動きが強まっています。2025年4月1日に東京都、群馬県、北海道などで全国初となる「カスハラ防止条例」が施行されました。例えば都では、「何人もカスハラを行ってはならない」と規定した上で、客や従業員、事業者に対し、カスハラを防ぐための対応をとることを責務として定めています。この施行を受けて、宿泊施設などではポスターの掲示などを行うほか、相談窓口の設置といった従業員を守る体制作りや研修、マニュアル作成などの対策が積極的に行われています。

また2025年6月4日に、カスハラ対策を雇用主に義務付ける法律が国会にて可決・成立しました。これはカスハラ対策を事業主の「雇用管理上の借置義務」とすることを主な内容とするもので、これに違反した事業主は報告徴求命令、助言、指導、勧告または公表の対象となります。早ければ2026年の10月頃に施行予定で、事業主はこれまで以上にしっかりとした対応を求められるようになります。

このようにカスハラ対策がますます強化されていますので、宿泊業界の仕事や接客の仕事に対して、その点を不安に感じていた人にとっては、安心して働ける環境が整ってきていると言えるかもしれません。

未経験者もウエルカム。若手の意見も積極的に取り入れ、やりがいのある職場に

それ以外に離職理由としてよく挙がるのが職場での「人間関係」です。特に宿泊業界は、以前のイメージで上下関係が厳しい施設が多そう…と思っている人が多いかもしれません。ただ、その点は、現在大きく変わってきています。

労働者不足解消のため、全体的に未経験者や異業種からの転職者を歓迎する雰囲気が強くあります。さらに、若手のアイディアや意見を積極的に取り入れたり、未経験者を重要なポジションに起用したりなど、能力や意欲に応じてどんどん活躍することができる施設が増えています。

職場での人間関係に不安があったり、未経験の業界への不安を感じていたりする場合でも、現在の宿泊業界は働きやすい環境と言えると思いますので、ぜひ興味があれば飛び込んでみてください。


宿泊業界の離職率の現状と、その改善のためのさまざまな対策についてご紹介しました。施設によっても、スタッフに長く働いてもらうためにいろいろな工夫を行っているところがたくさんありますので、気になるところがあればホームページや求人票などで細かくチェックしてみてくださいね。
 

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