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インタビュー

【宿で働く人インタビュー】 旅館やホテルを元気に。お客様にも働く人にとってもいい宿を 株式会社咲楽 代表取締役社長 高橋祐一さん

2026.04.09

今回は宿ではなく、宿泊業界で働く人としてこの「もし宿」を運営する株式会社咲楽の高橋祐一さんが登場。実は高橋さんは、コンサルティング会社や投資会社勤務を経て、咲楽を立ち上げた異色の経歴の持ち主です。そんな高橋さんに、現在の宿泊業界の問題点やこのサイトを立ち上げた思いなどについてお伺いしました。

旅館やホテルの問題解決のお手伝いをするため会社を立ち上げ

株式会社咲楽は、宿泊業界(旅館・ホテル)専門のコンサルティング会社。昨年には直営施設第一号となる、愛犬と泊まれる古民家宿「赤城山-懐-」を開業。宿の運営も行っています。そんな咲楽の代表取締役社長を務めるのが高橋祐一さん。実は元々は宿泊業界ではなく、外資系の大手コンサルティング会社や再生ファンド運営会社などにお勤めだったのだとか。

「最初の会社では特に宿泊業者とは関係がなく、小売業の企業さんやメーカーさんなどさまざまな業種を幅広く担当していました。そのうち、もう少しクライアント企業の中に入って働きたいなと思いまして。その後、再生ファンド運営会社に転職しました。そこでは担当企業に私が役員として入って、実際に現地で社員さんたちと働いていました。その会社の工場に常駐して、作業服を着て、おじさんたちと『一緒にこの会社をどうやってよくしていこう』みたいな話をしましたね(笑)」

そんな高橋さんが宿泊業界に興味を持ったのは、知人からのある相談がきっかけだったのだそうです。

「知り合いの方から『伊豆の旅館の経営者の相談にのってもらえないか』という話をもらったんです。当時は会社員でしたし、『私でよければ』と仕事ではなく、個人的にお話を伺うことに。もともと旅行が好きで、何かお役に立てることがあればと思ったんです。そして、いろいろとお話を伺ってみて、業界全体が結構厳しい状況だということを知りました。それがこの仕事をするようになったきっかけです。その後もう一度、再生ファンド運営会社に転職するんですが、そこには面接の時から『宿泊業界の仕事がしたいです。それ以外はやりたくない』って言って入りました。特に宿泊業界に特化した会社ではなかったんですけどね」

その再生ファンド運営会社で旅館・ホテルの再生事業責任者として数々の施設をサポート。10年程働いたところで、それまで抱えていた案件がひと段落し、そのタイミングで退職と会社の立ち上げを決意されたのだそうです。

「宿泊業界のコンサルに特化してやっていきたいと思って、この会社を立ち上げ、今年で13年目になります。この仕事をして、あらためて宿泊業界全体として環境が整っていないところがまだまだ多いなぁと。そういったところをひとつひとつ変えるお手伝いをしながら、旅館やホテルが元気になるためのサポートをするというのを会社のミッションとして掲げています」

深刻な人材不足。来てもらうだけでなく続けてもらえる環境、条件を整える

自ら現地に足を運んで、現場を見て、話しを聞き、数字も見ながら現状を分析、把握していく。そして、そこから問題点をあぶり出し、解決策を講じていくのが高橋さんの普段のお仕事の流れ。

「定期的に現地の方々と打ち合わせをして、問題解決のためには誰がいつまでに何をするかを決めます。宿泊施設は、どうしてもそういったことがうやむやになってしまうことが多いんですよ。みんな毎日の、目の前の業務に追われていますから…。なので、我々も含めてそこにいたメンバーがそれぞれ宿題を持ち帰って、2週間後とか1か月後に、その結果を持ち寄る。上手くいったならそれを継続するし、上手くいかなければ違うやり方を考える。それをグルグル繰り返していく感じです。課題を整理して、できる環境を作るためのサポートをしています」

実際にさまざまな宿泊施設の問題と向き合う高橋さんが感じている、現在の宿泊業界の最も大きな問題が「深刻な人材不足」だと言います。

「多くの施設が、きちんと働く環境、条件面を含めて用意できていないというのが大きな原因かなと思います。お給料はもちろんですが、お休みだったり勤務時間だったりが整っていない。土・日・祝日がお休みの場合、年間のお休みはだいたい120日くらいになります。それが旅館さんだといいところでも現状108日くらいしかない。もっとないところもあります。これでは来てくれる人も増えないですし、せっかく来てもらっても働き続けることはできないと思います」

そんな宿泊業界の人材不足を目の当たりにし、その問題に一石投じようと立ち上げたのが、求人サイト「もし宿」です。条件面を整えつつ、人に来てもらう。そして来てもらうだけでなく、長く働き続けてもらう。このサイトを通じてその流れを作っていきたいとのこと。

「こだわりのひとつは、一定の労働条件を満たしている施設のみを掲載している点です。やはり長く働くには条件面が整っていないと難しいと思うんですよ。なので、現在は年間104日のお休みが取れる施設、つまり週休2日と同じ休みが確保できる施設を掲載しています。これで十分という意味ではないです。最低限のラインという意味ですね」

あわせて、施設や働く人たちの雰囲気と生の声を届けることも大切にしているのだそう。

「基本的にはどの施設も、現地にインタビューに行って、そこで働いている人に話を聞きながら、それを元に記事にしています。やっぱり宿にはいろいろな人が関わって、その人たちがチームとしてお客様に価値を提供するビジネスなので、どんな人が働いているのかとうことが特に重要になってくる業種だと思います。それぞれ合う合わないがあると思うんですが、記事を見て『ここなら自分に合いそうだな』とか『こういう人たちと働いてみたいな』と思う施設にぜひ応募してもらえればと思います。そうすることでお互いミスマッチを防げるんじゃないかと」

これからもこの姿勢でサイト運営をしていきたいと高橋さん。

「環境が整っていて、さらに働いている人の生の声をありのままにお伝えしていく。それをちゃんと受け取って判断していただけるようなサイトにしていけたらなと思っています。そうすることで、いわゆる条件だけを見るような求人とは、密度というか濃さが違ってくると思うので、そういったところはこれからもこだわっていきたいです」

宿泊業界の魅力は、幅広い領域の仕事があること

このように会社員時代から長く宿泊業界の仕事に携わってきた高橋さん。そんな高橋さんが思う宿泊業界の仕事の魅力とは?

「宿泊業界のお仕事って、その領域がとても広いんですよね。お客様が1泊していただくと、スタッフはすごく長い時間をお客様と共有させていただくことになります。どういう場所で過ごしていただくか、どんな館内着や寝巻を着ていただくか、そしてどんな食事を提供するのか。やっていることが衣食住の広い領域にまたがっている上に、それでどうお客様に喜んでいただくのかも考えないといけない。私はそれがすごくおもしろいと思うんですよね。接客に興味がある人はもちろんですが、そうでない人でもこれだけいろいろな業務があるわけですから、絶対に自分のスキルを生かせたり、興味を持てたりする分野が見つかるはず。そういう業界ってほかにはあまりないんじゃないかと思うんです」

さらにチームで仕事をする点も宿泊業界の仕事のおもしろさのひとつと高橋さん。

「宿ではみんなでチームとして働かないと結果がでないんですよね。どんなに優秀な人がいても、一人では賄うことができない。接客に長けている人、料理が得意な人、裏で施設をちゃんと整えてくれる人、予約を受けて管理する人…。それぞれが自分が与えられた役割の中で、お客様に対してサービスを提供していく。そうすることで宿全体の評価が上がるんです。そうやってチームとして働くおもしろさも感じることができると思います」

また、旅館という日本独自の宿泊施設の形があるのもおもしろい点。

「ただその旅館の数は、コロナ禍前の20年間で、それまでの半分にまで減ってしまっているそうなんです。さらにコロナ禍を経て、その数はさらに減っていると思います。世界的に見ても旅館という独自の宿泊施設の形態があるというのは、とても珍しいことなんですよね。日本独自の形態、そして日本の文化が反映された宿の形だと思うので、そこはやっぱりこれからも残していきたいなと思っています」

そんな思いもあって、昨年には初となる直営の宿「赤城山-懐-」をオープン。

「懐は自然のなかで愛犬とゆったり過ごせる宿をコンセプトにしています。やる前は、結構山の中なので働く人が集まるのかが未知数でした。でも蓋を開けてみると、自然と動物が好きで、さらに宿のコンセプトに共感したということで応募してくれる人が多くて、それがいい意味で想定外でした。もちろんベースとして働きやすい環境や条件になっていると思うんですが。それだけじゃなく、ただ働いてお給料をもらうだけの場所ではない付加価値と言いますか、そういうものが人に来てもらうためには大事なんだなと実感しました。まだまだ完ぺきではないんですが」

今後はさらに直営の宿を増やしていきたいと語ります。

「もちろん、旅館やホテルが元気になるお手伝いをするっていうところは変わらず、そのほかに、みんなにとっていい旅館を作っていきたいなと思っています。宿泊されるお客様に喜んでいただけて、働く人、関わる取引先の人、地域の方々などから『いい宿だね』と言っていただける施設を作っていきたいですね。その土地だったり、古民家などの建物だったり、その場所にあわせたコンセプトのある宿をやっていけたらなと思っています」


このような思いで、施設と働く人、両方の問題解決に真摯に取り組む高橋さんのこだわりが詰まったこの「もし宿」。各施設の記事を読んでいただくと、条件はもちろん、施設やそこで働くみなさんの雰囲気がわかりますので、ぜひ自分に合った施設を見つけて応募してみてくださいね。
 

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