旅館

能登九十九湾 百楽荘

再び息づく海に、希望の音が響く。百楽荘がつなぐ能登の未来

  • フロント
  • 接客/サービス
  • 調理人/厨房

金沢駅から車で約2時間。のどかな海沿いを進むと、美しい入り江が連なる能登九十九湾が現れます。
まだ震災の爪痕が残る中、地域の努力によって少しずつ笑顔が戻りつつあります。



今回訪ねたのは、プリスリゾート株式会社が運営する海辺のリゾート「能登九十九湾 百楽荘」。
「金澤 湯涌温泉 百楽荘」の姉妹館で、同社が最初に手がけた施設です。
春に取材した湯涌温泉の温かい職場、その原点がここにあります。


 

「いいね!ノート」に刻む成長の証
能登の地で夢を仕込む料理人

最初にお話を伺ったのは、料理の専門学校を卒業後、2022年に入社しこの施設自慢の料理で腕を振るう高井 翔さんです。



まず、百楽荘に入社を決めた理由を
お聞かせください。

「はい。専門学校1年目のときに、ここの総料理長が外部講師として来てくださったのがきっかけです。私は能登町の出身で、地元で料理の仕事をしたいと思っていました。そのときにお話を聞いて、“ここなら自分が大きく成長できる”と感じたんです」

具体的にどんなところに“成長できそう”と感じたんですか?

「若いスタッフが多くて、若手が中心になって動いていると聞いて、試作や練習の機会も多く、やる気があれば何でも挑戦させてもらえる環境だと感じたんです」

現在の調理場は10人くらいで、料理長や主任が40代〜50代。
後は20代の若き料理人たちが中心で、同期には未経験から入った方もいるそうです。 
実際入社してみてどうでしたか?

「本当にやりたいことができる環境でした!1年目に『お造りの仕事をしたい』と相談すると、料理長が課題を出してくれ、業務後に練習を重ねました。想いを尊重し、成長を支えてくれる職場です」
料理の世界ってそういう教育なども厳しいイメージがあったので、
課題を一緒に考えてくれるのって嬉しいですよね

「そうですね、自分も『見て覚えろ!』ってイメージがありました。でもここはやってみたい意欲を潰さないというか、それをやりたいためには何をすればいいかを教えてくれるので、とてもありがたい職場です」



今は何を担当されているのですか?

「今は煮方をやっています。3年目でやらせてもらえるのは大きいですね。朝食の出汁取りと準備がメインで、炊き物などの味付けも夕食の分まで担当をしています。3年目で味付けを任せてもらえるのは大きい経験になります」
献立を開発するときは、
皆さんも意見を出し合ったりするのですか?

「基本の構成は料理長が中心に考えますが、自分や若手にも、器の選び方や盛り付けについて『サンプルを作ってみて』と任せてくれることがあるんです」

実際に高井さんが試作したソースや、盛り付けた料理は
今の会席料理にも出ているそうです。

ここ能登では輪島塗など有名ですが
盛り付けや器の勉強はどうされているのですか。

「1年目の頃から先輩の盛り付けを写真に撮りまくりましたね(笑)。まずは完全に再現できるように練習し、そのうえでフルーツの置き方や高さなど、自分なりの工夫を加えて見てもらいます。良いと思ったものは“いいね!ノート”を作ってまとめているんです」

“いいね!ノート”、名前からも高井さんの
前向きさが伝わってきますね。



調理場の勤務体制を教えてもらえますか?
「A・B・Cの3シフト制で、自分は今A番として朝食と夕食の一部を担当しています。B番は昼食と夕食の仕込み、C番は夜の後出しまで。中抜けがなく休憩時間もきちんと決まっていて、忙しいときは別のシフト同士で助けあっています。希望休も取りやすく、3連休も可能なので、練習や試作の時間も確保しやすいですね」

調理場で中抜けがないのは珍しいですね
ちなみにお昼は賄い飯ですか?

「社員食堂があって、地元のおばちゃんたちが定食などを作ってくれるんです。どれも本当に美味しいですよ!」

地元の方が作ってくれる社員食堂、素敵ですね!
地域との関わりや連携について、
何か取り組みをされていることはありますか?

「地元のお米業者さんと一緒に、稲を刈って干すという昔ながらのやり方に取り組みました。近くのスーパーでは地元の高校生が収穫した栗が売られていて、そういう食材は積極的に買うようにしています。食材の背景を知ると、料理にも物語が生まれる感じがして、より大切に向き合える気がします」

そんな素敵な取り組みを行う調理場では、施設内の桟橋でお客様が釣った魚を捌き、
朝食や夕食で提供しているそうです。九十九湾の新鮮な海の幸を味わえるとあって、
それを楽しみに訪れる方も多いそうです。
最後に今後の目標をお聞きしました。

「これからもたくさんのサンプルを作って、料理長に『いいね!』と言ってもらえる一品を増やしていきたいです。気に入ってもらえた料理は“いいね!ノート”に書き留めて、自分の財産にしています。将来は能登町で自分の店を持つのが夢です。震災の影響もありますが、だからこそ能登を元気にしたい。まずは出汁づくりから、一日一日を大切に積み重ねていきます!」



“いいね!ノート”がいっぱいになったそのとき、
きっと高井さんの夢が、ここ能登の地で形になるんでしょうね。

家具職人から支配人へ
ものづくりの心で、人と地域を育む

次に登場いただくのは、生まれも育ちも能登。
地元をよく知る支配人、田保(たんぼ)政紀さんです。



もともとずっと宿泊業界で仕事をされていたのですか?

「いえ、業種的には全く違うことをしていました。実は8年半ほど“家具を作る”仕事をしていたんですよ(笑)」

家具を作っていたんですか!?

「そうです。いわゆる“造り付けの家具”です。住宅や学校、図書館などの備え付け家具ですね。お客様から『こうして欲しい』という要望を受けて、色んな家具を作っていました」

支配人自身が施設の家具や備品など直すことも、
時々あるそうです。



この施設でアルバイトをしていたそうですね。

「はい。10年ほど前、趣味が高じてレーザークラフトを作り、1人で革職人をしていた時期がありました。能登を拠点に金沢の友人の店に作品を納めていましたが、利益が少なく続けるのが難しくて。アルバイトをしながら今後を考えていたとき、社長から“社員にならないか”と声をかけてもらったんです」

3、4年前に支配人になられたそうですが、
マネジメントする立場で心がけていることはありますか?

「僕は職人として男だらけの現場だったので、最初は少しピリピリしていたと思います。でも今は若いスタッフが多くなり、世代が変われば接し方も変えなければと感じています。ジェネレーションギャップに悩むこともありますが、今は父親のような気持ちで、一人ひとりが社会人として成長できるよう、人との接し方や考え方を伝えることが自分の役目だと思っています」



正社員になったのは社長がきっかけということですが、
社長はどんな方ですか?

「私が入った当時、現社長は専務でしたが、最初は正直苦手でした。よく怒鳴る人だなと(笑)。でも今思えばそれはよくわかるんです。当時は“上がり始め”でまだまだ厳しい時期。昔は『幽霊旅館』と言われていたボロボロの旅館を20年かけて立て直している途中で、厳しくやらないと回らなかった。でも凄いなと思うことは年を重ねるごとに考え方も変えてきていて、柔らかくなり、新しい事業に挑むときは子どものように目が輝いて、可愛い面もあって、誰よりも仕事を楽しんでいる人ですね」

素敵な社長さんですね。
この施設がプリスリゾートの始まりなんですよね。

「そうですね。ここから湯涌温泉の施設を立ち上げ、今年の11月には金沢市内に割烹旅館『つる幸』がオープンします。あちらも本当に素晴らしい。私が支配人なら、メンテナンスが恐ろしいくらい贅沢な造りなんですよ。間違いなく石川を代表する高級旅館になると思います!」

それは楽しみにですね。
ところで先ほど高井さんがお話されていましたが、
調理場もシフト制で“中抜け”がないのは珍しいなと思ったのですが。

「昔の旅館は“中抜け”が当たり前でしたが、それでは若い人が続かないと感じていました。早い段階でシフト制を導入し、中抜けを廃止したのは社長の大きな決断。旅館全体でお客様に評価される仕組みに変えたことで、若手の採用と定着につながったと思います。」

周りの施設からも『若い人がたくさんいるよね』と言われるそうです。
ところで田保さんはどんな人に来て欲しいですか?

「若手はもちろん欲しいですが、まずは素直で、興味を持って、自分を探せる人。それが出来る人はいずれ夢を見つけられると思うんです。あとは正直“動けるおじさん”も欲しいです(笑)。僕は今42歳になるんですが同じ世代がいなくて、社員の平均年齢も20代なんで、おじさん同士で仕事終わりの一杯を一緒に行きたいですね」

能登はまだまだ復興途中だと思いますが、
地域と何か連携する計画などはありますか?

「社員食堂や仕入れを通して地域とのつながりは少しずつできてきましたが、まずは足元の復旧が最優先です。中でも最も重要なのが桟橋の完全復旧です。護岸が損傷しており、復興工事の影響で業者も不足している上、費用の問題もあります。現在は海中のガレキ撤去を進め、設計や申請といったプロセスへ進む段階にはまだ至っていません。今年5月に仮設の桟橋を造って一時的に復旧しましたが、地盤自体が失われている箇所も多く、本格的な復旧はこれからです。桟橋はこの施設にとって欠かせない場所なので、必ず元の形に戻したいと思っています」



家具づくりから始まり、旅館づくりへ。
ものづくりの心をそのままに、人を育て、地域を支える支配人。
田保さんのまなざしの先には、確かな未来が見えていました。

能登の風に響くトランペット
若きリーダーが見つめる宿の未来

最後にお話を伺ったのは、昨年4月に入社し、
現在はサービススタッフとしてリーダー職を務める大杉一真さん。
大学卒業後、約1年半でリーダーに抜擢された若手注目株として活躍されています。



大学卒業後、なぜ旅館業に入ろうと思ったのですか?‎

「大学時代にお寿司屋さんでホールスタッフをしていて、接客が本当に楽しかったんです。石川県も好きでしたし、地域に貢献できる仕事がしたいと思って、旅館業を選びました。」

金沢がご出身ということですが、
能登にお住まいがあるのですか?

「寮で暮らしています。料理が趣味なので調理器具がどんどん増えていくんです(笑)。同期や先輩たちと、寮のパーティールームで鍋を囲んだりして親睦を深めています」

寮にはパーティールームもあるんですね。
能登の新鮮な食材で楽しむ鍋は、とても美味しそうです!

実際に働いてみていかがでしたか? ‎

「高級な印象があって最初は少し緊張しましたが、実際は良い意味で肩の力が抜けた、あたたかい雰囲気でした。スタッフの皆さんもとても穏やかで、安心して働くことができました」

現在の業務はフロントや配膳、電話対応、浴場の管理など、日によって担当はさまざま。
管理総務部のリーダーとして、他のスタッフの進捗確認や改善提案も行っています。



今後業務として
やってみたいこととかありますか?

「会社に貢献できることが一番ですが、個人的には支配人のようなポジションでマネジメントに興味があります。また、採用関係にも少し興味があり、男性スタッフを増やすことに貢献できればなって考えています」

先ほどの田保支配人が希望している“動けるおじさん”が
来てくれるといいですね!

この会社の面白いと感じる点は何ですか? ‎

「入社のきっかけにもつながるのですが、一般的に旅館はあまり店舗展開をしないイメージがありますよね。そんな中で、会社説明会で積極的に新しい店舗を展開していることを知り、他とは違う、進化し続ける姿勢に強く惹かれました」



みなさんでアイデアや企画を
出し合うこともあるのですか?

「はい、毎日業務が終わった時にアイデアや改善点があればそこで出し合うようにしています。今日も料理について、『もう少しここが改善できるのではないか』と話し合っていたところで、毎日ブラッシュアップしています」

リーダーの次のステップとしては、
どのようなキャリアパスが用意されているのですか?

「現場の運営を中心に、スタッフをまとめながらお客様満足を追求する道と、集客や経理など、専門性をより極める道の2つの方向性があります。面談で希望を伝えて、自分に合った進路を選べるようになっています」

選べるのはいいですね。
施設として今後やってみたいことはありますか? ‎

「当館のシンボルでもある九十九湾に迫出したお食事処「乙姫荘」を早く復旧させたいと考えています」
ここの復旧はスタッフ全員の願いでもあります!」


桟橋と『乙姫荘』が一日も早く元通りになりますように、心から願っています。



ところで、
休みのときは何をされていますか?‎

「料理以外だと、楽器が好きでトランペットを演奏したりしています。たまに海でトランペットを吹いたりしています」

海でトランペットなんて、
格好良すぎます(笑)!

「せっかく能登で働いているので、いつか乙姫荘でお客様が夕食を楽しんでいる時に、桟橋でトランペットが吹けたら最高ですね!」



大杉さんのトランペットが九十九湾に響き渡るその日こそが、
本当の百楽荘の復興の日となるでしょう。

復興の途中にあっても、笑顔と挑戦の灯は消えない。
能登の海と人が紡ぐ未来に、静かな力強さを感じました。
百楽荘の新しい物語はこれからも続いていきます。

(取材・執筆:水元 勇)







 

 



 


 


 



 



 

もしもこの宿ではたらいたら?

近隣情報

家賃相場
1K〜1DK(6万〜6.7万)
買い物
スーパー(車で5分)、コンビニ(車で10分)
その他施設
病院(車で15分)、小学校(3.7km)
交通情報
・金沢駅から車で2時間半
・金沢駅特急バスで2時間 
・能登空港からタクシーで30分

自治体情報

基本情報

数字で見る

  • 平均残業時間

    20時間

  • 年間休日

    110

  • 平均勤続年数

    5

  • スタッフ数

    80

  • 平均年齢

    28.0

企業名
プリスリゾート株式会社
企業所在地
〒927-0552
石川県鳳珠郡能登町越坂11−34
施設名
能登九十九湾 百楽荘
客室数
26
従業員数
80
設立
1972年12月26日
従業員寮

単身寮(旅館から車で15分)    

家賃補助
あり(月2万円の住宅手当あり)
アクセス

よくある質問

面接オンラインでも可能でしょうか。

はい、オンラインでの実施も可能です。

未経験でも可能でしょうか。

はい、可能です。実際に異業種から入社し活躍している社員が多数います。

前職以上の年収を保証して業務を設計するとはどういう意味でしょうか。

希望をふまえて決定しますが、基本的に前職の年収以上となるように役職、役割、業務内容を柔軟に設計します。詳しくは面談や選考過程でお伝えします。

面接選考前に面談は可能でしょうか。

はい、可能です。まずはお気軽にご応募くださいませ。

寮の設備は何がありますか。

"ベッド、冷蔵庫、電子レンジ、シャワーブース、
洗濯機(共用)を備えています。

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