旅館

福一

440年の歴史につながる、次のおもてなしを創る。

  • 接客/サービス
  • 仲居

群馬県渋川市伊香保町伊香保香湯5-4

掲載期間2024.05.16〜2024.09.30

露天風呂

情緒あふれる伊香保の石段街。

昔ながらのお土産屋さんや射的屋さん、最近できたおしゃれカフェを横目に階段を上っていくと、
最上段にどっしりと構える立派な建物が目に入ってきました。

そうです、このお宿。
地元で知らない人はいないほどの老舗旅館、創業440年の「福一」と「諧暢楼」です。
どちらも株式会社福一が運営しており、2024年の今、また新たに変わろうとしているとのことで、お話を聞きに伺いました。

伊香保の石段街

宿泊業未経験、しかも唯一の外国人スタッフ。
でも楽しく働けるのは、同僚たちのおかげ。

まずお話を伺うのは、コールティ・マルタさん。
イタリア・ミラノの有名観光地コモ湖出身、入社二年目のフロント担当です。

カウンターを覗くと、チェックインや会計業務などをテキパキとこなす姿が見えました。

イタリア人のフロントスタッフ

もともと日本のアニメや漫画の世界に憧れて来日。日本語学校に通いながら、IT企業で翻訳やカスタマーサポートなどを経験するものの、「もっと日本語で人と接する仕事がしたい!」と、宿泊業界への転職を決意したそう。

そんな時に出会ったのが、ここ、福一。

「実は面接まで群馬に来たことがなかったんです。初めて来てみたら、大好きな山に素敵な石段街など、日本ならではの景色が気に入ってすぐに『ここに移住したい!』と決めました。」

 

ただ、入社したのがコロナ禍ということで、最初はお客さまにも従業員にも、自分以外の外国人がいない状況。うまく馴染めるのか、ちょっぴり不安だったそう。

「言葉の壁で、お互いニュアンスが伝わりづらかったりもしました。でも、先輩方はこちらが理解できるまでゆっくり説明してくれたり、とにかく皆さん優しくて。
今ではとても居心地が良いです。困った時は助けてくれて、間違えた時はどこが問題で、どうしたら良くなるかまで教えてくれます。」

チェックインやアウトなど接客を担当

伊香保での生活を支えるのが、職場から車で5分の女子寮。
送迎バスやコンビニもあるので、とっても暮らしやすいとのこと。

残業も繁忙期以外はほとんどなく、仕事終わりや休日のプライベート時間も、かなり充実して過ごせているそうで、1~2週間ぐらいお休みをとって、イタリアに帰国することもあるとか。
昔は「宿泊業の人はなかなか休めない」と聞いたこともありますが、変わってきているんですね。

「同僚には同年代も多いので、休みの日は一緒に渋川や高崎に遊びに行ったりしています。有名な『高崎パスタ』は、イタリア人の私にとっても絶品なんですよ。」と、マルタさん。

お恥ずかしながら、高崎パスタ、初耳でした。
イタリア人が認める味との熱烈なプレゼンに、思わず食べてみたくなった私。さすがマルタさんは、本当にお話上手です!

さらに同僚たちとのエピソードとして「休憩の時には、みんなでワイワイ喋ったりしていますね。」と、休憩室へ案内してくれました。
バックヤード休憩室

これは、カフェ風おしゃれ空間でびっくり!
老舗旅館のバックヤードに、こんなにかわいらしいスペースがあったなんて。

休憩室は最近リニューアルされたとのことで、ここのテレビはなんと、YouTubeやNetflixなども観られるタイプ。
Wi-Fiも完備されているので、スマホに没頭して過ごすこともできるとは、休憩時間まで充実して過ごせちゃいそう。

最後に「旅館で働く楽しさは?」との問いに「お客さまとの会話!」と即答のマルタさん。
「私がフロントに立っていると目立つのか、よく話しかけられるんです。出身地の話題から始まり、『日本語が上手だね』『イタリア大好きです』なんて言ってもらえるのがすごく嬉しくて。」
外国人採用も行っています

今ではマルタさんとの会話を楽しみに訪れるお客さまも多いみたい。
ちょっとしたお客さまとの会話こそ、マルタさんにとってお仕事での心安らぐひとときとなり、そんなマルタさんの笑顔がきっとお客さまの心にも、大切な思い出として残ることでしょう。
 

泊まって気づけたこの宿の良さ。
老舗でもアットホームな雰囲気を大切にしたい。

福一では、お客さまがお食事時にもプライベートなひとときを過ごせるよう、個室食事処を設けています。そこで接客や配膳を担当するルーム係が、冨岡美夢さんです。

「この街全部が大好きですね。」

そう語る冨岡さんからは、新卒二年目とはいえ、ベテランのような落ち着いた雰囲気を感じます。
それもそのはず、なんとこの伊香保で生まれ育ち、旅館スタッフとしての勤務も2社目。学生時代から他の旅館でアルバイトをしていたそうです。

会席料理や飲料の配膳・接客を担当
たくさんの旅館が立ち並ぶ中で、福一への就職を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

「入社前に一度試泊させてもらったんです。実際にお客として泊まってみて、細やかなお料理の出し方をされているんだなぁと。老舗なのに堅苦しくなくて、とても快適に過ごせたし、アットホームな雰囲気にも惹かれました。
今度は自分がもてなす側で働くんだ!という気持ちが強くなりましたね。」

それは素敵な入社前制度!
自分の五感で感じることで、より宿を知ることができ、働くイメージもしやすそうです。

福一の個室お食事処

「お客さまが楽しめるように接客しているんですけど、お相手の笑顔を見ると自分も楽しくなっちゃう。
それが、この仕事の一番の魅力です!」

お客さまを喜ばせたいという気持ちが強い冨岡さんは、お料理やお酒の説明以外にも、宿の歴史や街のこと、ときには趣味の話まで花を咲かせているそう。
こうして取材をしていても、ついこちらが笑顔になるようなことをおっしゃって場を和ませてくれるなど、普段の明るい接客姿が自然と想像できてしまいます。
プライベート空間でお客さまにおもてなし

自宅では、別の旅館で働くお姉さんと意見交換をして、ちょっとしたアイデアをもらうこともあるそう。
プライベートで訪れる居酒屋やレストランでも、つい店員さんの行動をチェックしてしまうんだとか。

「どういう感じで対応していて、どんなタイミングで料理を出して、とか。良いところを見つけたら、それを仕事に取り入れたりもしています。」

また、さらに身近なお手本でもある先輩たちは、できていないところは時に厳しく指導してくれ、良いところはたくさん褒めてくれる。そんなメリハリのある環境だからこそ成長できるのだと、冨岡さんは言います。

「周りのアドバイスをたくさん吸収できたおかげで、私もだんだん仕事が上手くなってきたと思います。」

厳しいだけでもなく、優しいだけでもない、程よい社内教育のバランスが、老舗旅館のたゆまぬ成長を支えているのかもしれません。
 

まず、スタッフが働きやすい環境であること。
それが、お客さまやこの街のためにもなる。

「長い一年でした。」
そう話してくださったのは、昨年先代から社長の座を受け継いだ18代目、福田光広さん。

どんな方なのか、事前にスタッフの皆さんに伺ったところ、誰もが口を揃えて言うのです。
「話しやすい」「従業員思い」「すごくやさしい」と。

「仕事上困ったことを相談したら、効率よく働けるようすぐに動いてくれた。」なんてお声もありました。
従業員の声にすぐ応えてくださるのはもちろん、何より社長に直接相談できるような職場環境もすごいですよね! 
創業440年老舗旅館の18代目社長、福田光宏さん

「やっぱり皆さんが安心して働けるのが一番の重要事項なので。残業時間だとか基本的な福利厚生の見直しを、積極的に進めています。」と、やわらかな笑顔で話される福田社長。

新社長の改革のおかげで、以前福一で働いていたOB・OGの方々の中にも、もう一度戻ってこられる方が出てきたそう。
ご自身では長かったとおっしゃる一年の間、心を砕かれてきた職場環境の改善が功を奏し、スタッフたちからもとても頼りにされているようです。
色鮮やかな和傘

お話しの合間に、ふとロビーや館内を見渡すと、目を引く綺麗な和傘がたくさん。
その前で写真撮影を楽しまれるお客さまもたくさんいらっしゃったのですが、実はこれも、スタッフさんのアイデアなんだそうです。

「今は、とにかくいろいろと積極的にやってみようという姿勢ですね。今年はもっと、スタッフのアイデアなどをどんどん吸い上げて、具現化していきたいなと。」
そうした思いから、若手社員中心の委員会を発足したり、宿泊業界にも拡がってきたDX化についても、昨年から動き出しているそうです。

正直、安土桃山時代から続く老舗ともなれば、新しい取り組みには抵抗があり、苦戦するイメージがありますが…。

「でも10年後には、在宅勤務で接客のおもてなしができるようになっているかもしれないですから。」と、伝統を守るだけでなく、少し先の未来も見据えている福田社長のもとなら、そんな心配も必要なさそうです。
石段街のお土産屋さん

お客さまにとって、伊香保での知名度が高い福一での滞在経験は、そのまま街の印象にもつながります。
福一での滞在をより良いものにすることで、街の収益につながり、地元で暮らすスタッフへ還元され、結果的に石段街全体の活性化に繋がるという考えから、地域連携プランの販売にも取り組んでこられました。

今年は、地元の芸術イベント「渋川アートリラ」にも参加し、美術作品を館内に飾る予定だそう。
「石段街のシンボル的な存在である福一だからこそ、その役割をちゃんと果たしていきたい」と福田社長。
 

スタッフや会社、街全体の未来まで気を配る18代目社長の思いを、スタッフの皆さんがしっかりと受け取り、生き生きと働かれているのがよくわかりました。

440年という伝統とおもてなしの心を守りながら、労働環境の改善や、新しく可能性のあるものを積極的に取り入れている、福一。
2024年のまさに今、先人たちが作り上げてきたものと若手の意見を上手く組み合わせて、さらに進化しようと奮闘されています。

あなたもここに新しい風として加わり、一緒に次のおもてなしを作り上げていきませんか。
 

 

(取材・執筆:斉藤 真央)

もしもこの宿ではたらいたら?

近隣情報

家賃相場
渋川市は1Kで3.5万円、2DKで4.3万円程度
買い物
コンビニ(550m)、石段街に飲食店多数あり
その他施設
郵便局(1.5km)、小学校(1.4km)など

自治体情報

基本情報

数字で見る

  • 平均残業時間

    15時間

  • 年間休日

    105

  • 平均勤続年数

    5

  • 年間有給休暇
    取得率

    30%

  • スタッフ数

    75

  • 男女比

    6 男性 : 4 女性

  • 外国籍の人数

    2

  • 平均年齢

    45.0

企業名
株式会社福一
企業所在地
〒3770102
群馬県渋川市伊香保町伊香保香湯5-4
施設名
福一
客室数
83室
従業員数
75名
従業員寮

あり

施設から車で5分、徒歩30分

5,000円/月

 

家賃補助
あり
アクセス

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