一期一会のおもてなしを、最先端の省人化で実現するホテル

「せごどん」の愛称で親しまれている幕末のヒーロー西郷隆盛や、桜島、屋久島などで有名な鹿児島にやってきました。鹿児島中央駅から徒歩10分の場所にありますが、せっかくなので市電に乗り、鍛冶屋町駅で降りて、徒歩3分でホテル「fav鹿児島中央」に着きました。



こちらのホテルは２０２２年１１月に開業し、ここを運営する株式会社オックスコンサルティングは、鹿児島以外にも長崎や熊本などに９つの宿泊施設を展開しており、省人化オペレーションをコンセプトに現在３名のスタッフで、効率的でありながら心のこもったサービスを提供しています。

ブライダルからホテルへ
お客様の特別な時間を届ける仕事

最初にお話を伺ったのはブライダルの仕事を１０年やっていた経験を持つ、鹿児島出身の上野　早穂さんで、このホテルには２０２３年８月に入社されました。



ブライダル業界にいらしたんですね。
どうしてホテル業界に入られたのですか？

「ブライダルは最高のおもてなしをする場だと思うんですけど、その中で高い接客スキルが求められ、１０年間培ってきた経験をホテルで活かしたいと思いました。仕事はホテルを中心に検討していましたが、このホテルの客室は今まで見たことがないデザインで、ビジネスホテルにはない、スタイリッシュで、新しい感じがしたのでここに決めました」



実際部屋には乾燥付きのランドリーもあって、バスルームも広々していて、
私も驚きました！上野さんがホテル業界に入る前にイメージしていたことは？

「夜勤が当然あると思っていました！でもここは、夜２２時以降は無人になり長崎にある系列ホテルに転送して対応してもらっています。あとフロントはガッツリ対応するのかと想像していましたが、自動チェックインや精算システムを導入していたのも新鮮でしたね」

ここはカフェもあって、ゲストとのコミュニケーションも多そうですね。

「海外からのお客様も多いのですが、英語も学校の授業で学んだくらいだったので、最初は全然喋れませんでしたが、授業で覚えていることもあって、言葉を組み合わせると通じたりして意外と簡単だなって（笑）」



入って１年とちょっとですが、海外や日本のお客様と話すのがとても楽しいそうで。
早瀬さんにブライダルとホテルの違いをお聞きしました。

「ブライダルの仕事は担当制ですが、ホテルはまさに『一期一会』です。私たちの対応次第で鹿児島の印象、さらに日本全体の印象にまで影響を与える可能性があるので、お客様がホテルに訪れる一度きりの機会を大切にしています」

一期一会を大切にしているからか、過去にはぶどう狩りに行ったお客様が『美味しかったから』と、
わざわざ持ってきてくれたこともあったそうです。

このホテルは３名体制で運営されているんですよね？。

「はい、1人はホテル経験者、もう1人はお花屋さんですね。私がここでは一番社歴が短いのですが、マネージャーなど管理者が常駐しているわけではなく、みんなフラットな関係でやっています。弊社で運営している他県のホテルからも、繁忙期はヘルプがありますし、1人体制は私が入社して半年くらいからスタートしたのですが、社内の他県施設にいるスタッフに電話で確認しながら、仕事を進めることもできたので安心でした」

マニュアルもしっかりと用意されており、入社半年で1人勤務が
任されるほどの環境が整っているそうです。

今後の目標や、やってみたいことはありますか？

「まだ一人ではできない仕事もあるので、できる仕事を増やしていきたいです。また、食材の原価管理もできるようになりたいですね。飲食はアルバイト経験しかないので、原価をコントロールして、これだけ利益が出るというのがまだわかってないところもあるので」

朝食の新しいメニューを考えることもあるそうなので、そこも大事なんですね。



最後に鹿児島の好きなところをお聞きしました。

「料理が美味しいです！あと『人が優しい』と県外の人からもよく言われます。タクシーのおじちゃんが必ず話しかけてくれるとか。それは私たちから見れば自然なことなんですけど（笑）」

上野さんは、ホテルの「顔」として一期一会を大切にしながら、訪れたゲスト一人ひとりをもてなし、
鹿児島をもっともっと大好きになってもらうために、日々努力されている姿がありました。
 

みんなで一緒に学んで
成長していく職場

次にお話を伺ったのは桜島垂水の出身で、２０２３年の１月に入社した村山　真澄さんです。
フェリーに乗って毎週実家に帰っているそうです。

鹿児島フェリーのうどんが人気と聞きましたが、
「個人的には垂水港のフェリーのうどんの方が絶品です（笑）」と明るく教えてくれました。



先ほど上野さんが話してくれた、ホテル経験者は村山さんでしたか。

「ビジネスホテルでフロント業務をやっていました。元々ホテルのフロントスタッフが格好良くて憧れていたんです。でもコロナの影響で一旦辞めることになって、ホテルにはまた戻りたいなって、ずっと思っていました」

鹿児島にはたくさんのホテルがあると思いますが、こちらに決めた理由は？

「もうこのホテル一点でした！ホテルのホームページで部屋のタイプなど見て、一般のビジネスホテルとは全然違う雰囲気だったのと、どうせ働くなら周りに自慢できるホテルがいいなって」



ビジネスホテルと違うところはありましたか？

「客層が一番違いますね。以前はお仕事や一人での利用が多かったのですが、ここはご家族の利用もあって、皆さんがフレンドリーなので、お話するのがとても楽しいんです！」

宿泊業界で働くって、まだ少しネガティヴなイメージがあると聞くのですが、
経験者の村山さんはどうでしたか。

「ここは働きやすいです。入社もみんな同じタイミングで入った方が多いので、教えてもらうよりは、みんなで一緒に学んで、成長していく職場なので、そこはやりやすかったですね」

フラットな職場環境なので、みんなで意見やアイデアなど自由に出しやすく、
今も朝食を見直しているそうです。

「以前の朝食は２種類のみだったのですが、新しいメニューを開発しないとお客様の満足度も上がらないので、新しいメニューを試して今も内容を見直しているところなんです」



実は私、鹿児島に初めて来たのですが、
おすすめポイントはどこですか？

「まずは桜島を見にいく人が多いのですが、逆に桜島の展望台から見る鹿児島の景色がすごく綺麗でいいんですよ。天気がいい時は霧島も見えるんです。あとご飯が何を食べても美味しくて、ハズレのお店があんまりないんですよ（笑）」



上野さんもご飯が美味しいっておしゃっていました。
あとでおすすめのお店教えてくださいね。
残業とかお休みなどはどうですか？

「繁忙期は少し残業もありますが、それ以外残業はあまりなく、長期で休みを取るときは他県のホテルからもヘルプが来てくれるので、安心して休めますよ」

少人数でやられているので残業もあって、休みも取りにくいのかなと思っていました。
この業界で働くことに対して不安を感じている方々に、メッセージをお願いします。

「仕事に対する向上心があれば何も怖くないですよ。もちろん大変な時もありますけど、一つの仕事を覚えてやれることが増えると、とても自信にもなりますし」

最後に力強く笑顔で話してくれました。向上心があれば
経験や年齢が本当に関係ない職場だなと実感できた時間でした。

効率化だけじゃない
人が輝くホテル運営

最後はこのホテルを運営する株式会社オックスコンサルティング
ホテル事業部　部長　阿部　真也さんにお話をお聞きしました。



もっと大勢のスタッフさんが働いていると想像していたのですが、
ワンオペなど少ない人数でやられているんですね。

「省人化オペレーションがコンセプトに、自動化など取り入れ少ない人数でやれるようにしています。その結果が、オーナー様や我々運営会社の利益にもつながっているんです」

元々オックスコンサルティングは民泊でスタートし、
大阪、福岡、長崎でコールセンターを自社で持っていたとか。
阿部さんはこの会社にはいつ参加されたのですか？

「私は大阪で民泊という言葉が一般的になる前からやっていました。そこから京都のスタートアップ企業のホテル事業に参加し、この会社には２０２０年に入社しました。」

来年頃には大分県にもオープンを予定しているそうです。
省人化の他に、会社としてはどんな取り組みをされているのでしょうか。

「最初はもちろんOJTはしますが、リモートでも対応できるよう、色々とツールを使って可視化して、早く一人で対応できるようにバックアップしています。早い人だと数日で出来る方もいますね。あとはOTA（オンライントラベルエージェント）の管理などは本部でやって、現場に集中できるように本部機能と現場を分けて、ホテルではたらくスタッフの負担を極力減らしています」

なるほど、そうすることで、一人でも対応できるようになるのですね。
ところで阿部さんは宿泊業界の課題ってどんなところだと思いますか？

「人件費やリネン代などコストの高騰が続いていますが、単純に宿泊単価を上げれば解決するわけではありません。この課題が宿泊業界で賃金が上がりにくい要因の一つだと思っています。ですが当社のポリシーとして、こうした状況を理由に給与を抑えるのではなく、成果を出したスタッフにはしっかりと評価を行い、給与を上げています。実際、年に2回昇給したスタッフもいます」

運営しているホテルは半分以上が未経験者で、面談をしながら従業員の満足度を
上げる取り組みもやっているそうです。

省人化オペレーションで効率を追求しながら、「一期一会」のおもてなしを大切にするオックスコンサルティング。スタッフが成長できる環境と正当な評価制度が整った職場で、新しい宿泊体験を一緒に創り上げてみませんか？

（取材・執筆：水元　勇）